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将来に対するさまざまな不安の原因や背景を探り、将来の不安との付き合い方や対処法、視点の切り替えなどについて解説します。

将来に関して何らかの不安を感じたことのある人は多いのではないでしょうか。

インターネットのある調査(2023.10)によると、約8割の人が将来に不安を感じていると答えています。不安は漠然としたものから具体的なものまで、さまざまなものがあります。

不安は完全に消すことは出来ないかもしれません。しかし、小さな一歩を踏み出すことで、将来への不安は変えられるかもしれません。

今回は、将来に対するさまざまな不安の原因や背景を探り、将来の不安との付き合い方や対処法、視点の切り替え方などについて解説します。

1つでも参考になることがあれば嬉しく思います。

1. なぜ不安を感じるのか

どうして私たちは不安を感じるのでしょうか?
あらためて、不安が発生する仕組みにつて確認してみましょう。
人間は未知のことに対して、本能的に不安を感じるようになっています。これは人間の進化の過程で、正体のわからない敵や動物に襲われないように、警戒心を働かせたことへの名残りだといわれています。未知のことに対して不安な心理が働くことで慎重に行動して、危険を避けようとする機能が、人間の脳には備わっているのです。この仕組みが、未知の将来に対して不安を感じさせるのです。つまり、将来に不安を感じるのは人間の本能であり、自分の身を守るための大切な機能なのです。「不安」は、危険信号のアラームのような機能を持っているのです。人間はストレスに直面すると、自分を守ろうとして防御反応が働きます。危険を察知して、逃げる(逃避)か戦う(闘争)かの準備をするためです。不安はストレス反応のうち、自分を守るために必要な機能でもあるのです。

2. 将来に対する不安の原因

(1) 仕事に関する不安

仕事に関する不安には、収入への不安や雇用形態への不安、仕事の将来性への不安などさまざまなものが考えられます。収入への不安では、このまま今の仕事を続けていて、将来的に収入面での不安を感じる人もいるでしょう。また、雇用形態への不安では、派遣や契約社員として働いている人で、契約が終了するときの不安を感じることもあるかもしれません。そして、現在の会社や職種に対して将来性を感じなかった場合など、不安を覚えることは自然なことです。

(2) 予測不可能なことへの不安

 将来起きることが予測できない状況を不確実性といいます。現代は不確実性の時代ともいわれています。社会やビジネス環境が複雑化し、想定外のことが起こったり、将来の予測が困難だったりします。このような時代では、先の見えない未来に不安を感じることは自然なことです。これからは、この不確実性を受けいれることも大切になります。未来は不確実であることが当たり前だと考えることで、過度な不安に備えることも出来るかもしれません。

(3) お金に関する不安

 将来に不安を感じる原因として、収入面での問題が考えられます。お金がなければ生活が大変になることが予想だれるからです。「今の状態で生活していけるだろうか」と悩んでしまうかもしれません。正社員として働いていても、すぐに給料が上がるわけではありません。「このままこの仕事を続けていてよいのだろうか」と悩み、苦しくなる可能性もかります。お金は自分の生活を守り、安定させ、不安を解消するために大切なものです。生活に密着しているからこそ、将来の不安にも大きな影響を与えるのです。

(4) 健康に関する不安

(5) 人間関係への不安

 将来への不安には、人間関係に関する不安も挙げられます。世代関係なく、多くの人を悩ませるのが人間関係です。基本、人は一人では生きられないといわれているため、孤独になってしまう、孤立してしまう可能性は、人を大いに不安にさせます。また、家族や職場、近隣住人、子どもの学校のPTAなど、自分の意志とは関係なく付き合っていかなければいけない人間関係での不安もあるかもしれません。場合によっては、少しでも苦手と感じる人との付き合いに不安や恐怖を感じてしまうかもしれません。

(6) ライフイベントへの不安

 ライフイベントとは、生活上のさまざまな出来事のことです。特に、結婚、出産、親の介護などはその後の人生に影響のある大きな出来事は、責任や課題が伴うため、不安を感じやすいものです。例えば、若い世代は結婚式や育児費用に悩み、中高年層は子供の学費や独立、親の介護といった新たな課題に直面するかもしれません。これらのイベントに対応するための計画が立てられないと、不安が募りやすくなります。

(7) 世の中の変化に対応しきれない

近年、社会の変化が早く、しかも大きくなっている傾向があります。AIの進歩に象徴されるテクノロジーの急激な進化により社会構造が変わったり、今までなかったような災害が発生したり、新たに戦争が起きたり、驚くような変化が発生しています。このような変化に対応しきれない不安も、将来の不安の原因になります。また、マスコミ等を通じて膨大な報道を頻繁に見聞きすることで、余計に不安な心理が増幅されます。そして、このような大きな社会の変化があることで、この先も未知の大きな出来事が発生するのではないか不安になってしまします。

3. 将来が不安の背景

(1) 社会的な変化

 今の社会は変化が早いといわれています。自分たちの生きる1年先、5年先の未来がどうなっているかさえ、予測するのが難しいと感じている人も多いのではないでしょうか。近年、少子高齢化が進み、多様な働き方の推進や雇用形態の変化、新型コロナウイルスの流行、世界各地で勃発している紛争、災害の激甚化など、身近なところで起っていることばかりでなく、世界各地で起る社会的な変化に触れるたび、将来に対して不安が大きくなります。

(2) 個人的な経験

 将来が不安になる要素として、本人が自覚していなくても、その背景に過去の体験や経験が関係している場合があります。例えば、子どものころに、純粋に「やりたかったからやった」ことで親や周囲から「なんてバカなことをしたの」とか「ダメな子」などの言葉を言われたことが嫌な記憶となって残っている。また、上司などからなどのパワハラの経験がある場合などでは、失敗や上手く行かないことに対して必要以上に不安を感じてしまうことがあります。

(3) 個人的なトラウマ

 過去の失敗経験がトラウマ(心的外傷)となり、同じ過ちを繰り返したくないという恐れから、決断や行動を躊躇うことがあります。トラウマは心の傷のことです。突然の出来事によっても、慢性的に反復的に加えられる場合にも発生します。突然の出来事によって心的外傷が起こった場合を、急性ストレス反応と言います。自然災害や戦争、事故や犯罪などの体験をトラウマ体験と呼びます。自然に回復する人もいますが、生死にかかわる危険や強いショック体験が残ることをPTSD(心的外傷後ストレス障害)といいます。

(4) 経済的な負担が大きい

 将来に対する経済的な負担は、少子化、収入や貯蓄、年金、介護、教育費などさまざまな要因によって引き起こされます。世代によっても将来の経済的な負担への不安の違いが見えます。若者世代では、収入への不安の背景に、景気の動向だけではなく奨学金の負担感も影響しているとのこと。また、少子高齢化による社会保障費負担の増額への不安もあります。現役世代では住宅ローンや教育資金、親の介護等に対する不安。高齢になるにつれ、老後資金や介護費用への不安も増してきます。

(5) 雇用形態の多様化

古くから日本の企業は独自の雇用形態を歩んできた歴史があります。しかし、時代の変遷の中で、雇用形態の多様化が進む現在、将来に不安を感じる人もいるかもしれません。以前は、「正社員で終身雇用」という認識が強くありましたが、現在はそのような認識もずいぶん変わってきています。例えば、1つの企業の中でも「正社員」「契約社員」「派遣社員」「パート」「アルバイト」などの雇用形態の多様化が進んでいます。

(6) 気象変動

 気候変動による異常気象や環境問題が将来に与える影響を不安に感じ、慢性的に不安感や怒り、悲しみなどの感情を抱く状態をエコ不安(気候不安)とも呼ばれ、若者を中心に世界で広がっています。気候変動の影響を強く受ける地域や国に住んでいるかどうかに限らず、自分事として捉えることはやむを得ないかもしれませんが、それには痛みや苦しみを伴うことも事実です。今後、いろいろな検討が必要性となるケースが出てくるでしょう。

4. 将来の不安との付きあい方

(1) 不安を完全に解消することは出来ないと理解する

 不安のメカニズムを知ると、不安は完全に解消することができないことがわかります。しかし、私たちの多くは、その不安を解決したいと思います。そのため原因追及をしたりもします。では、不安は「気を付けて」という注意喚起を促していると捉えてみてはどうでしょうか。今一度「不安」が教えてくれることに耳を傾けてみることも大切です。完全に解消することができないのであれば、「出来ないのだから、しばらく付きあうか」くらいの余裕も必要になります。

(2) 今出来ることに集中する

 「不安だ」と思っているだけで、何もしないでネガティブなことばかり考えていると不安を助長させることになります。不安というものは、何かに集中している、行動している間は無くなることが多いです。自分の中に将来に対して不安な気持ちが起きてきたら、自分に問いかけてみましょう。「今の自分に出来ることは何?」と。返ってきた答えに集中することです。その積み重ねが、将来に備えるためのリアクションにつながります。

(3) 小さな目標を立てる

 将来が不安なときに小さな目標を立てることで、達成感や自己効力感を高めたりしながら、継続的に行動につながる可能性があります。小さな目標を作る方法はいくつかあります。例えば、やりたいことややりたくないことを書き出してみる。自分にとっての「理想の状態」を考えてみる。自分が夢中になってやっていたことを思い出す、などです。焦らず、じっくりと小さな目標を立てることが大切です。無理のない範囲で、続けられるような小さな目標の積み重ねが大事です。

(4) 情報を集めすぎない

 大量の情報があふれている現在、これらの「情報」が将来への不安の原因となる場合があります。大切なのは、今の自分にとって必要な情報をしっかり見極めて取り入れることです。溢れかえるほどの情報の中から、その情報が自分にとって本当に必要なのか、自分自身に問いながら、素直な自分の気持ちに答えていく姿勢が大切になります。多くの情報に触れても、振り回されることがないよう、必要な情報を見極められる力を養っていくことで、不安のへの対処ができるようになります。

(5) 信頼できる人に相談する

 将来の不安には、自分の力だけではどうしようもできなかったり、自分の知識だけでは解決できないものもあります。そのようなときは、不安な気持ちを誰かに話して助言をもらうことがお勧めです。不安な気持ちを他人に話すことは、とても勇気がいることです。思い切って話を聞いてもらうだけでも、気持ちが楽になります。場合によっては、専門家に相談するのもよいかもしれません。一人で不安に思っているよりも、他人に相談する方が解決策もみえてきます。

(6) マインドフルネスを実践する

 マインドフルネスには、将来への不安や心配を軽減する効果が期待できます。「マインドフルネス」とは、今この瞬間に集中することで、自分自身の状態に気づき、それをありのままに受け入れる在り方のことです。実践の仕方としては、瞑想を行うことが一般的に言われます。5分程度から始めて、椅子に座った状態で呼吸に意識をしながら、今に「集中」します。途中いろいろな思考が浮かんできてもそれを「良い」「悪い」と判断しないで、呼吸に注意をむけます。呼吸の他にも、食事に集中する、身体の感覚に集中する、書くことに集中するなど、いろいろな実践方法があります。

(7) コーチングを試してみる

 コーチングでは、「答えは自分の中にある」という考えが基本にあります。コーチ(聞き手)との対話を通して、自分自身と向き合って自分が抱えている将来への不安の本質について深掘りしていきます。自分だけでは難しい作業を、コーチと二人三脚で行うイメージです。コーチングを受けることで、視野が広がり、新たな発想ができるメリットもあります。コーチングでは、コーチがさまざまな視点から問いかけてくれます。行き詰まりを感じたら、プロのコーチによるコーチングを受ける方法もあります。

5. 将来の不安の解消法

(1) 現状の不安や不満を書き出す

 まず、自分は何が不安なのか、不安の原因を紙に書き出して明確にすることが重要です。書き出すことで、頭の中にある漠然とした不安を具体化することができるからです。紙に書き出したら、それが仕事の不安、お金の不安、健康の不安、人間関係の不安、はたまた別の不安なのかなど、カテゴリーに分けてみることです。それぞれのカテゴリーに分けることで、具体的に何が心配なのかが明確にでき、その後の具体的な行動につなげることができます。

(2) 自己投資をする

 自己投資とは、自分の価値を高めるために時間と費用をかけることです。仕事の知識や能力を高めるため、あるいは人間性力を磨くためなど、その理由はさまざまです。自己投資で自分を成長させることは、将来の可能性を広がられるというメリットがあります。将来が不安と考えてばかりいると、ネガティブ思考になりやすく悪い方へ悪い方へと考えやすくなります。自己投資は、仕事やプライベートを充実させたり、将来への可能性や選択技を増やしてくれたりと、これからの人生を前向きに生きることにもつながります。

(3) 中期や長期の自分の見通しをもっておく

 将来が不安だからこそ、中期や長期的な目標が大事だともいえます。今は先行きが不透明で将来の予測が難しく、コントロールすることもできません。しかし、何が起きるかわからないので何も計画しない方がよいという訳ではありません。計画を立てるからこそ、例え予想外のことは起こったとしても、計画を修正しながら目標に向かうのではないでしょうか。目標を達成するために、どのようなリスクがあり、実現性はどうなのかなどは見えてきます。

(4) 人間関係を改善するコツを身に着ける

 人間関係で将来への不安を感じることも少なくありません。人間は他者と関わらずに生
活することはできません。世の中にはさまざまなタイプの他人がいるため、人間関係を改
善するコツを身に着けることは重要です。仕事の現場においては、人間関係を悪くしない
ために、コミュニケーションを適度に取ったり、お互いが気軽に実施できる「小さな気遣
い」も大切です。普段の生活では、深く関わり過ぎないようにしたり、角が立たないよう
に気をつけたりするなどの対応も必要です。

(5) 健康の維持

 将来が不安なとき健康の維持は、不安を軽減することに役立ちます。健康を維持するには、良質な睡眠をとり、バランスの取れた食事の摂取や適度な運動、禁煙や節酒に勤め、さらに定期的に健康診断を受けることが重要だといわれています。健康の不安を解消する一歩は、情報収集することです。一人で抱え込まないで、専門家の話を聞くことも大切です。相談相手に将来への不安を伝えることで、解決の糸口がみえるかもしれません。

(6) 行動する

 将来に何が起こるかは誰もわからないので、ある程度不安があるのは自然なことです。ただし、将来への不安を現実の問題から目をそらすための言い訳にしてしまってはいけません。不安は何か行動を起こさなければ解消しないことも多くあります。膨れ上がる不安への対処方として、今できることに集中することです。小さくても具体的な行動を起こすことができれば、自信につながり、不安が不安を呼ぶ悪循環から抜け出すことができます。

(7) 今を大切にする

 将来に不安があると、そのことばかり考えてしまい、今を大切にできないことが多くみられます。充実した人生を送っている人が行っているのは、目の前のことに集中するということ。今の自分を作っているのは過去の積み重ねです。未来は今の自分の連続です。今目の前にいる人や目の前にあることは、この瞬間のかけがえのないことだと感謝する気持ちを持ち、今を大切に向き合ってみましょう。

(8) 何でも話せる相手を作る

 何でも話せる相手を作っておくと、将来への不安を感じたときなどでも大切なリソースになります。話せる相手は信頼のおける、安心安全の場を提供してくれ人であって、その人からのアドバイスや意見を素直に受け入れることができる人が良いでしょう。不安を持つと、われわれは孤独感を感じやすくなります。そのような場合であっても、安心して話せる相手を作っておくことは、自分の人生にとっても大きなプラスになります。

6. まとめ

 不安は誰にもあるものです。でも、それにどう向き合うかで未来は変えられます。不安を不安のままにしておくのではなく、小さな行動を積み重ねることで、不安を減らし、自信につなげることができます。未来は不確実だからこそ、今出来ることに集中することが大切です。
 私も自分の将来が不安でどうしようもない時期が何度となくありました。そんなとき、ここに書いた付きあい方や解決法を試しながら、不安にのみこまれないようにしてきました。そのような経験を書かせてもらいました。
 1つでも参考になることが合ったら試してみてください。