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感情をコントロールすることのメリット及びその方法をお伝えします。

「ハムレット」や「ロミオとジュリエット」などで有名なイギリスの文豪、ウィリアム・シェークスの有名な言葉に「人間は感情の動物である」というのがあります。

1980年に心理学者のロバート・プルチックは、人間の感情を色相環のように分類した「感情の輪」を提示しています。そこでは基本感情として「喜び」「恐れ」「怒り」「悲しみ」「信頼」「期待」「反感」「驚き」8つが挙げられています。基本感情にも強弱があり、強度によっては別の感情へと派生します。感情同士が混ざり合うことでいろいろな感情が生まれると考えられました。

日常生活を送る上で、仕事をする上で、感情をコントロールすることは非常に重要なことです。

しかし、人間関係の幅が広がれば広がるほど、感情のコントロールは上手くいかなかったり、コントロールしきれない場面が出てくる時もあるでしょう。

こういった時に感情をコントロールすることが出来れば、あらゆる物事を円滑に進めることが出来ます。

今回の記事では、感情をコントロールするための方法やメリットについてご紹介します。改善のヒントが1つでもあれば参考にしていただければと思います。

1. はじめに

1) 「感情」は自分自身へのサイン

感情とは、でき事や対象に対して感じる気持ち(喜怒哀楽)のことです。それら一つ一つは、われわれに様々な情報を教えてくれます。
例えば、「うれしい」「たのしい」といった感情は、「もっとやりたい」「続けたい」など、前向きな気分を教えてくれます。もし、「うれしい」「たのしい」と感じ無いのであれば、「興味が無い」「自分にはあわない」のサインとも受け取れます。
また、「イライラ」「モヤモヤ」「不安」といった感情は、「休養が必要」「体のエネルギーが落ちている」「もしもの時のための備えが必要」などの身の危険を知らせるサインとして受け取れます。
このように、感情は「今、自分に何が起こっているのか」、「それをそのように対処していくのか」を教えてくれる大きなサインなのです。

2) 「感情」「思考」「行動」の関係

「感情=気持ち」はほぼ無意識に湧いてくるものです。これに対して、「思考=考え」は、自分の意志のもと行うことで、湧きあがってくるのに少し時間がかかります。そして、「行動=行うこと」は、あることを目的として、実際に何かをすることです。
 感情が湧き上がって行動するパターンでは、両者をつなげる要因が「衝動」です。衝動的な行動の結果は、日常生活や人間関係、仕事などに好ましくない結果を招くことがあります。感情を優先して行動を起こした場合、あとから「思考」の大切さが理解できます。
 考えてから行動するパターンでは、両者をつなげる要因に「目的」があります。目的意識ばかりが優先してしまうと、うまくいかないときに心の負担が大きくなります。「目的」を決めたときの気持ちがどうなのかを確認することも大切です。その経験からいろいろな「感情」の存在が理解できるようになり、大切さを学ぶこともあります。「感情」「思考」「行動」のバランスが重要になります。
 「感情」「思考」はバランスよく使うことが大切です。「感情」は「思考」の過程や結果で出てきた目的に影響を与え、「行動」するモチベーションを与えてくれます。

3) 感情をコントロールするってどういうこと

 感情をコントロールとは、置かれた状況で、自分がどのような感情に支配されているかを知って、それを調整、操作することです。そのためには、自分自身のパターンを知ることが大事になります。どんなことにワクワクやドキドキを感じるのか、イライラやモヤモヤを感じるのかなどを知っていると、そうなったときやそうなりそうな時の対処方法を考えることが出来ます。感情にまかせて行動してしまった結果、後で後悔しないための方策を作っておくことが出来です。自分の感情のパターンを知り、上手く操作対応することが、感情コントロールということです。

4) ポジティブな感情

ポジティブな感情とは、前向きで積極的、肯定的な感情です。喜びや希望、愛情や安らぎ、興味などの気分がよいと感じる感情がそれになります。ポジティブ感情の研究者のバーバラ・フレドリクソン教授は、ポジティブ感情は、喜び、感謝、安らぎ、興味、希望、誇り、愉快、鼓舞、畏敬、愛の10種類から成り立つと提唱しています。ポジティブな感情は、免疫力を高め、病気のリスクを減らし、思考や行動の選択技を広げる作用があります。さらに、人生の幸せを向上させる要素を生み出すとされています。ポジティブな感情は、私たちに学びと成長をもたらして、思考や行動の幅を広げてくれます。

5) ネガティブな感情

 ネガティブな感情とは、否定的で消極的、後ろ向きの感情です。怒りや恐れ、不安や悲しみ、憎しみや失望などの自分自身に対してマイナスな影響を与える感情がそれになります。ネガティブな感情は、闘争・逃走反応(戦うか逃げるかの反応)といった私たちの行動の幅を狭める選択をすることには有効でが、多用し過ぎると行動の幅を狭めてしまうことにもなります。
 ネガティブな感情は、「怒り」を感じると攻撃的になるとか、「不安」になるとよくないことを想像してしまなど、ピンチのときのサインとしての役割もあり、適応力や洞察力を高めてくれることでもあります。

2. 感情をコントロールすることのメリット

1) 円滑なコミュニケーションが取れる

感情的になってしまうと、些細なことが原因でトラブルになってしまうことが多く見られます。また、感情をコントロールできないと、「怒り」「不満」にまかせて、モノや人に当たってしまう、大きな声を出してしまう、といったように、感情をあらわに表出してしまい、周囲から距離を置かれてしまうこともあります。今の感情に気づきコントロールが出来ることで、冷静になることができ、コミュニケーション力を高めることが行えるようになります。

2) 良好な人間関係が築ける

感情をコントロールできるようになると、良好な人間関係が築けるようになります。コントロールが上手くいかないと、人に対して怖い、不安などの気持ちを強く持つようになります。他人に対して「嫌悪」や「妬み」などを抱いてしまうと、良好な人間関係は築けません。「嫌悪」は相手を「信頼」出来ないために起こる感情です。「妬み」は劣等感かなどを伴う心の痛みです。感情コントロールが出来るようになれば、苦手な相手を「信頼」し「感謝」する姿勢に変えることが出来るようになります。

3) 自己肯定感が高まる

自己肯定感とはありのままの自分を認め、尊重することから生まれる感覚です。物事を前に進めるための原動力になります。今ここの自分の感情に気づき、それをうまく操作することが出来るようになれば、「不安」「恥ずかしい」と否定的な感情のアラームをキャチ出来るようになります。そうすることで、「勇気を出して」「失敗してもいいじゃない」と思いを切り替えることが出来切るようになります。

4) 冷静に客観的に振舞うことが出来る

 「冷静、客観的に振舞う」とは、落ち着いて、第三者の視点で物事を見たり考えたりすることができることです。何かトラブルが発生した時など、当事者は感情的になりやすいものです。感情に支配されると、収拾がつかなくなることも多くあります。そのようなとき、感情に気づき、その感情を認め、調整、整理することができれば、出来事の原因や解決法を見つけることができるかもしれません。

5) その場に応じた対応ができる

 その場に応じた対応力とは、「臨機応変」な対応ができるとも言い換えられます。小さなトラブルでも、その対応によっては大きなトラブルになることもあります。アクシデントがあった際、その時に湧き起こる感情を冷静に捉えることができれば、その後の対処方法や解決策につながります。感情を味方につけることは、大きなリソースになります。

6) 自分の感情をプラスのエネルギーに変えることが出来る

本気で取り組んだのに、思うような結果が出なくて「悔しい」「残念だ」と感じることがあります(「悔しい」「残念」はネガティブな感情の一つ)。そのようなとき、感情のコントールができると、それらのマイナスの感情をプラスのエネルギーに変えることがでます。ネガティブな感情はたくさんのエネルギー持っています。感情のコントロールが出来るようになると、それらのエネルギーをプラスへと転換することが出来るようになるのです。

7) 共感力が高まる

共感力とは、相手の気持ち(感情)に寄り添うことです。感情のコントロールができるようになると、自分だけでなく相手の感情にも、より配慮できるようになります。例えば、自分が言われてネガティブな感情になるようなことは言わない、しない。相手の話を頭ごなし否定することはしないで、まずは話を聞いてみる。そして、相手が求めないかぎり、助言はしない。などのことの大切さが理解できるようになります。

3. 感情をコントロールするポイント

1) 自分の感情に気づく

例えばこんなことはないでしょうか?「何も気にしていないと言いながら、モヤモヤ感を抱いて感情的になっている」「否定的気持ちはいけないと元気に振舞ってしまう」「感情を表に出さないようにと、表情が乏しくなってしる」。このようなことに気づいた時は、「今、私は何を感じているんだろう?」と、自分自身に問いかけてみましょう。すると、「モヤモヤしてイライラしてるんだな」とか「すごく悲しいんだな」「悔しいんだな」などの答えが返ってくるかもしれません。そうすることで、自分の感情に気づき、客観的に捉えることができるようになり、感情をコントロールしやすくなります。

2) 感情を認め、受け止める

 今の気持ちを、ありのまま認め、受け止めることが大事です。それはいつもポジティブな感情や思考ばかりではありません。時にはネガティブな感情や考えかもしれませんが、今感じていることを大切にすることが事なことです。「○○のときに□□に感じるんだ」とか「△△の場面で××の感情になるんだ」、「これが今の私なんだ」というようにです。自分のその気持ちや考えは、時として長所とも受け取れることがあります。新しい自分を発見するかもしれません。

3) その感情が教えてくれることを考える

自分の中から湧き出す感情は、私たち自身に、今の自分の状態について、たくさんの情報を教えてくれます。例えば、「悲しみ」という感情は、何かを失ったり、状況のコントロールが難しいと感じたときの感情です。また、「怒り」は自分や自分の大切なことを守ろうとするときに起こる感情です。「この感情が教えてくれることは何かな?」と自分自身の声を聞きながら、いろいろなことを進めていけると、心の負担も軽減できます。

4) 自分の気持ちをしっかり説明できる

「今、ここ」の自分の気持ちに気づき、その感情を受け止め、自分の言葉で表現できるようになると、コミュニケーション力に変化が起きます。自分の気持ちや考えは、言葉にしないと相手に伝わりません。「今、ここ」の感情を言葉にするためには、湧き起こってきた感情を整理し、意味付けをすることが大事です。「どうしてこうなったのか」「自分はどのような感情になりたいのか」などです。感情に意味付けが出来るようになると捉え方が変わり、感情そのものへの変化が起きます。そして、思考や行動が変わります。

5) 自分の思考・感情・行動のパターンを知る

自分の思考、感情、行動のパターンを知るというのは、「やりたい」「買いたい」という感情が優先して行動を起こすタイプのか、じっくり考えて「申し込みをする」「○○を買う」などの行動を起こすタイプなのかということです。このようなパターンは無意識のうちに行われていて、習慣的になっています。その繰り返しの中で、「自分はいつも同じ失敗をしている」「自分はダメだな」というような感情に支配されてしまうことがあります。自分の感情、思考、行動パターンに気づくことは自己理解への前進です。

6) 変化を恐れない

自分にとって良い変化でも悪い変化でも、何かが変わるということは、ワクワクドキドキする気持ちと同時に「不安」や「怖さ」が付いて回るものです。感情のコントロールをする中においては、必然的に発生することです。その怖さや不安を悪いことと蓋をして感じないようにしてしまうのではなく、時には自分の気持ちに正直に向き合うことが大事になります。そのようなプロセスの経験を通じて、より自分の感情への理解が深まり、その管理の大切さがわかるようになります。

7) 楽観性を発揮する

 楽観性とは、未来に対しての明るい見通しのことで、今が悪くても物事は全てうまくいくと考えて希望を持つことです。感情はポジティブなものばかりではありません。むしろネガティブな感情の方が多いかもしれません。困難さの規模によっては、楽観性を持たなければ乗り越えられないこともあります。「何とかなる」「きっと笑える時が来る」などの楽観的な思考を養うことで、マイナスな方向に向かっていきそうな感情を止めることができ、回復力(レジリエンス)を養うことにつながります。感情のコントロールが大きな助けになるのです。

4. 感情をコントロールする方法

1) 感情の複雑さや意味を知る

 人間の感情はとても複雑です。例えば「悲しみ」という感情が湧き起ったとします。その感情と向き合っているうちに「怒り」の感情や「恐れ」のようなネガティブな感情が重層して湧きあがることがあります。また「嬉しい」「安心」といった感情が立ち上がることもあります。このように、自分自身の感情も、決して単純なものでないことを理解することが大切です。ただ「悲しい」から悲しいだけではなく、理不尽な対応による「悲しみ」と「怒り」が混在し、それに寄り添ってくれる人が傍にいることがわかると「安心」や「嬉しい」感情が湧き起る。今の感情を知り、管理出来ることで、心の穏やかさを保ち、良好な人間関係が築けるようになります。

2) 感情を言語化する

  自分の感情を言葉にすることの大切さは、ただ相手に対し自分の気持ちを伝えることだけではありません。言葉にすることによって、自分の考えや感情を客観的に振り返ることが出来るという大きなメリットがあります。機嫌の状態は、同じ人であっても状況、ちょっとしたきっかけで全く違ったものになります。今この状態の自分の感情を素直に言葉にしてみることで、思考の整理ができ、自分の内省につながり、感情のコントロールが出来るようになります。

3) 自己理解を深める

 自分がどんな価値観を持ち、どんなことに「怒り」を感じ、どのような時に「イライラ」してしまうのか、また、どのような場所で「快感」や「リラックス」を感じ、勇気や希望が持てるようになるのかなどの情報をたくさん持つことが大切です。それらすべてを含めた自分という存在を知ることが自己理解だということです。その過程で立ち上がる自分の感情を知り、コントロールできることで、自己理解が深まります。感情をコントールするとは、その時々の自分の感情を理解し、安定した感情を維持することが出来ることなのです。

4) 他人の意見に耳を傾ける

自分の感情が優先してしまうと、他人の話をじっくり聞くことが難しくなり、相手の立場に立って物事を考えることが出来なくなります。他人の意見に耳を傾けられないのは、自分の思い込みが邪魔している場合が多くあります。「思い込みから抜け出す」などの、自分なりの気持ちの切り替え方が大事になります。自分の気持ちを素直に言葉にして伝え、相手の話に耳を傾けることができると、信頼関係が築きやすくなり、コミュニケーションが円滑になります。

5) 体を動かす

 自分の感情と思考がうまくかみ合わないときは、とりあえず体を動かしてみることです。心理学の中には、心と体のつながりを研究する分野があります。心と体は親密に関係しています。体を動かすことには感情の発散効果があります。また、頭の中で考えてばかりいるよりは、運動などで体を動かした後の方が、よいアイディア浮かぶことも多くあります。心の状態は体に現れます。また、体の状態は心に影響を与えます。体の使い方を変えることで、感情を変えることも出来ます。

6) 一旦立ち止まる

 感情的になりそうだなと気づいたときは、一旦立ち止まって時間を置いてみることです。一瞬でよいので立ち止まることで、「今、何に怒っているのだろう」「このモヤモヤは何だろう」と考えることが出来ます。無理してポジティブになろうとする必要はありません。ポジティブでもネガティブでもない中間のニュートラルな状態になることです。一旦立ち止まって、ニュートラルな状態に戻ることができることで、落ちつきを取りもどすことができるのです。

7) マインドフルネスを実践する

 マインドフルネスとは、心を「今ここ」に向けた状態をいいます。感情のコントロールが上手くできない方は、自分の「今ここ」の状態に気づくことが苦手な方が多いようです。マインドフルネスを実践することで、自分の感情や思考を客観的に眺めることができ、観察する力がついてきます。マインドフルネスの状態に到達する手段として、「瞑想」があります。例えば、今の自分の感情に気づいたら、大きく深呼吸をして、落ち着いたら、どうして感情的になっているかを考えてみるとよいでしょう。

8) その場から離れる

 「嫌悪」や「悲しみ」といった感情に気づいたら、先ずはその場から離れてみることをお勧めします。その場に原因があるかも知れないからです。状況を変えることで、優先的に自分の気持ちを落ち着けることに集中出来るかもしれません。嫌悪や悲しみを引き起こしたものを視界から外すことで、嫌悪や悲しみの心を治めやすくなります。また、その場から離れたときに、嫌悪や悲しみの原因となった出来事を考えることはやめてみる方がよいです。

9) 自分の思考パターン変えてみる

 例えば、ネガティブ感情の「怒り」は、「こうあるべきだ」「こうしなければいけない」という自分の理想と現実との乖離から起こるといわれています。ある出来事に対してとっさに湧き上がってくる考えを「自動思考」といいます。この自動思考の変化を試みること、つまり自分の見方や捉え方を変えてみることがポイントになります。習慣化された自動思考を変えることは勇気が必要かもしれませんが、「変えたい」という思いあれば「変える」ことが出来ます。

5. まとめ

 書家の相田みつをさんの著作、「いのちいっぱい」の中に収められている、「じぶん この やっかいなもの」という言葉が私は好きです。少なくとも、自分を厄介な者だと思っている人が、私以外にいるんだと知ったときの安堵感、衝撃を今でも覚えています。私自身、この「厄介な自分」な自分と、どう折り合いをつけていけばよいのか、ずいぶん長い間悩んできました。感情のコントロールについて興味を持つようになったきっかけでもあります。私が学んだコーチの場で感情コントロールの大切さを知り、EQの学びも深めました。今回は、それらの学びを通して私が読者の方がたにお伝えしたいことをまとめてみました。